認知症対応の介護施設の現場は、
毎日たくさんのことが起こります。
僕が働くグループホームの利用者さんで
ヨシオさんという方がいらっしゃいます。
ヨシオさんが便秘になると、
トイレのウォシュレットの水で
肛門と直腸に刺激を与え、
合わせて、お腹のマッサージをして
腸の蠕動運動を促しています。
ある日… いつものように、
ヨシオさんにしばらくお通じがないので
ウォシュレットの水を お尻にあてていました。
ウォシュレットの水がお尻にあたっている間…
ヨシオさんは生まれたての子犬のような
純粋な目で、遠くを眺めていました…。
それでも全く反応がないため、
水量の強弱ボタンを弱から強にして…
僕はヨシオさんの目の前に座りこんで
お腹のマッサージをしながら声かけをしていました。
「ヨシオさん!頑張ってー! 頑張ってー!お通じ出してー!」
すると、ヨシオさんが突然…
「あーっ!トンボが飛んでるぅー!」と叫び出し、
その状態から、立ち上がってしまいました…
「うわあぁぁぁぁ…!!!!」
気づいたら、僕はウォシュレットの水を…
思いっきり顔面で受け止めていました…
「ヨシオさん…いま何で立ち上がったの…? 」
そんな独り言を呟いた僕は気づいていました。
あの時、なぜ僕はウォシュレットのボタンを
弱のままにしておかなかったんだぁ…
とは言っても、トンボが見えていたなら、
まあ、しゃーないか…。
僕は肩を落としながら、
更衣室へと着替えに行く途中、
ビショビショになった僕を見て
職員の仲間が大爆笑していました…。
「えーーっ!それっ!どうしたの…?」
「いやー!やっちまったよぉぉ…」
「ついにやったかー!あっははははっ!
俺なんか、それでウォシュレットの水が、
口の中にガッツリ入った事があるぜ〜!」
僕は、仲間のその話を聞いて
救われた気がしました…。
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